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2015年度 理事長所信

第65代 理事長 荒谷   悦嗣

基本理念

基本方針

・志高きアクティブ・シティズンを呼び醒まそう
・次世代を担う志高きアクティブ・シティズンを育もう

<はじめに>

   1975年10月15日、広島東洋カープが後楽園球場で読売ジャイアンツを破り、球団創立26年目にして悲願のセントラル・リーグ初優勝を遂げた。それは、焦土と化した広島のまちから立ち上がった市民が「樽募金」で支えた希望の星であり、復興のシンボルでもあるヒーローたちが頂点に立った瞬間であった。平和大通りで行われた歓喜の優勝パレードには、当時の広島市民の3分の1を超える約30万人が押し掛けて空前の盛り上がりを見せた。そしてその2年後にはこの優勝パレードをモチーフとして、広島青年会議所が立ち上げに携わった「ひろしまフラワーフェスティバル」が開催され、初回から125万人を動員する一大ムーブメントに繋がったのだ。
   青年会議所は、市民の意識変革を推進する団体である。広島のまちを大きな湖と捉えれば、私たちが展開する青年会議所運動はそこに投じた一石に例えることができる。私たちが運動という一石を投じることで、まちに波紋が生じる。その波紋は瞬く間に水面を走り、更なる広がりを見せるだろう。では、より多くの、より広い波紋を創り出すにはどうすればよいだろうか。そのためには、私たちのみならず、広島に住み暮らす市民一人ひとりがまちの未来に一石を投じるような意識変革を図る必要があるのだ。

Ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country.
『国家があなた達に何をしてくれるかではなく、あなた達が国家のために何ができるのかを問うてほしい』

   アメリカ合衆国第35代大統領であるジョン・F・ケネディはその就任演説で、全ての国民が国家のために能動的に行動すること、すなわちアクティブ・シティズンたることを促した。私は、この考え方は何も国家に限ったことではなく、むしろ地域におけるまちづくり運動にこそ当てはまると考えている。従って、広島のまちにおいて私たちが果たすべき役割とは、率先垂範の精神でアクティブ・シティズンの火付け役となり、まちの活性化を牽引することに他ならない。例えたった1人で始めた運動であったとしても、それに賛同する同志を一人、二人と増やしていくことで、やがてまちを動かす大きなうねりに変化していくこと。これこそが、青年会議所運動の本質ではないだろうか。メンバーだけでなく市民を巻き込んで、まちづくりやひとづくりの能動者たる多くのヒーローを創出することができれば、まちの活性化に向けた大きなうねりを起こすことができるだろう。
   本年度は終戦から70年の節目であり、広島青年会議所はその前身である廣島青年商工協議会の設立から65周年を迎える。「70年間は草木も生えない」と言われた絶望的な状況であった広島が、70年経った今、これだけの繁栄を遂げたのは、ひとえに廃墟からの復興とその後の経済成長に向けた先達の志高き努力の賜物に他ならない。その志は、公に対する使命であり、利他の精神そのものである。本年度は「Make a HERO!」を合言葉に、私たちのみならず市民の志高きアクティブ・シティズンシップを育み、未来に光り輝く広島の創造に向けて大いなる一歩を踏み出そう。

<まずは私たちが志高きアクティブ・シティズンであるために>

   2016年の秋には「公益社団法人日本青年会議所 第65回全国大会 広島大会」が開催されます。全国大会という共通の目標を持って、これまで運動をともにしてきた行政や市民と一体になって大会を創り上げるためにも、まずは私たち自身が足下を見つめ直す必要があります。そして、誰のために何をすべきなのかを能動的に考え、アクティブ・シティズンとして志を高く持って行動しましょう。
   列車に例えるならば、全国大会の当該年度に向けて緻密にレールを敷設することが本年度の重要なミッションとなります。つまり本年度は、これまで私たちが醸成してきた全国大会に対する思いをより具体化していく作業が必要となるのです。そのためにも、2011年11月の臨時総会において私たちが全会一致をもって全国大会招致を決定した当時の初心を振り返ってみましょう。そこには、全国大会において「広島青年会議所の過去の検証と未来像の構築、会員個人の資質の向上と地域との連携強化」を最大限に達成することを目的として掲げています。私たちはこのぶれない目的を持っていたからこそ、2013年度に招致決定に漕ぎ着けたのです。開催前年である本年度は、行政や関係団体、そして特別会員の先輩方との連携をより強固なものにし、全国大会の準備や開催に至るまでのプロセスを共有していきましょう。
   また、私たちは広島のまちと向き合った運動を展開しつつ、日本青年会議所へ多くの出向者を輩出して学んできました。企業経営において、他社の優良事例(ベストプラクティス)を分析し、それを指標(ベンチマーク)に自社の活動を評価して改善を進める手法をベンチマーキングといいます。青年会議所における出向制度は、LOMとしての広島青年会議所にとって、そして会員である私たちにとって非常に有益かつ有効なベンチマーキングの機会でもあるのです。私たちにとって日常的な事項がLOMを一歩出ると実はユニークな習慣であることに気付くかもしれませんし、あるいは改めて広島青年会議所の素晴らしさを発見するかもしれません。いずれにせよ、新たなアクティブ・シティズンとの出会いは、私たちにとってまたとない成長の機会です。日本青年会議所本会や協議会へ積極的に出向し、LOMと自分自身にとっての更なる高みを目指しましょう。
   そして、会員拡大は本年度に限らず喫緊の課題ですが、そもそも会員拡大をどのように定義しているでしょうか。私は、会員拡大イコール新入会員勧誘ではないと考えています。会員拡大とは青年会議所運動そのものであり、年次を問わず全てのメンバーが自らの言葉で広島青年会議所の素晴らしさを伝え、私たちの運動を伝播することではないでしょうか。そしてそのためには、広島青年会議所が魅力的なアクティブ・シティズンの集合体でなければなりません。本年度も多くの同志との新たな出会いを大切にすると共に、私たちが置かれている環境と私たちの内部にある問題点を顕在化させ、そのうえで中期的な視野に立って会員拡大に取り組んでいきましょう。

<志高きアクティブ・シティズンを呼び醒まそう>

   私たちが広島のまちの活性化に寄与すべく構築した事業も、その意義や魅力を周知することができなければ自己満足に終わってしまい、私たちの本分である大きなうねりを起こす運動にはなり得ません。私たちの運動を効果的に発信し、少しでも多くの市民を私たちの運動に巻き込み、アクティブ・シティズンの波及効果による大きなうねりを起こすきっかけを創りましょう。
   まず、真に市民から必要とされる団体であるために、そして全国大会開催を含めた私たちの運動を広く市民に知っていただくためには、対外的な広報のあり方を検討する必要があります。これまでの対外広報の手段や方法を振り返って見直したうえで、行政や市民を巻き込んだ運動を展開するきっかけとしての新たな広報手段を模索していきましょう。
   次に、昨年度のJCI ASPAC山形大会アワードセレモニーにおいて最優秀地域OMOIYARI事業賞(Best Local-OMOIYARI Project)を、そして全国大会松山大会においてAWARDS JAPAN 2014 最優秀賞「グランプリ」を受賞した、その歓喜の瞬間が記憶に新しいところです。広島青年会議所の事業が世界の舞台で認められるのは実に14年ぶりであり、日本青年会議所のグランプリは7年ぶりの受賞でした。私たちが行った運動を検証し発信するために、大きな舞台でのアワードは非常に良いチャンスです。本年度も各種アワードに積極的に挑み、来たる全国大会で私たちの運動を発信する下地を作っていきましょう。
   そして、青年会議所運動は私たちメンバーが中心となって行うものですが、全国大会を成功に導き広島の持つ「つよさ」と「やさしさ」を全国に発信する運動を展開していくためには、私たちだけではなく行政や市民、特別会員の先輩方、そして私たちの身近な人の支えと理解がより一層必要になります。そのために、本年度も例会を有効に活用していきましょう。また、メンバーと家族とを含めた広島青年会議所全体の結束をより強く底上げする手段を講じていきましょう。
   さらに、それらの運動の先頭に立つ私たち、とりわけ今後を担う若いメンバーの資質向上が重要です。それには、私たちが自分自身と向き合うことが必要ですが、自分自身の限界は自分で設定するものではなく、目前の課題に精一杯挑むことでしか見えてこないものです。だから、自身が何をやりたいかではなく、与えられた役職や命題に身を投じて没頭し、歯を食いしばって向き合うプロセスを大切にしましょう。その結果として失敗したとしても、そのプロセスこそが自分自身にとって成長の糧であり、それこそが青年会議所におけるトレーニングです。青年会議所運動と真摯に向き合い、青年会議所運動を能動的に発信できる若き人財を育成していきましょう。

<次世代を担う志高きアクティブ・シティズンを育もう>

   青年会議所においては、CD(Community Development:社会開発)とLD(LeadershipDevelopment:指導力開発)が両輪であるとされながら、従前から両者を秤にかける議論もまた尽きません。ただ一つ確かなことは、市民の意識変革を促し、活気あるまちを創造するのは間違いなく人であるということです。だから、次世代を担う志高きアクティブ・シティズンの育成は、私たちの重要なミッションなのです。
   日本の戦後教育は、教育基本法第3条に掲げられた教育の機会均等によって市民の教育水準を高め、それが後の高度経済成長の原動力になったことは間違いありません。その反面、個を重視した教育が行き過ぎ、子供たちが公に対する使命を学ぶ機会が減少していることは否めません。だから、広島の未来を担う子供たちの志を育成するにあたっては、子供たちが自分一人で生きているのではなく、地域社会に生かされている感覚を持つことが重要です。そのために、新たな青少年育成事業を通じて、「自立」と「共助」が調和し、「生き抜く力」と「生かされていることへの感謝」が漲る社会の確立に歩みを進める運動を展開していきましょう。
   次に、広島青年会議所と教育現場との連携に着目してみましょう。これまでも事業で協働した実績がありますが、私たちの運動を伝播させるには教育現場との連携は非常に有効な手段であると考えます。昨今の様々な教育問題を解決に導くべく、文部科学省はコミュニティスクールや土曜授業などの施策を講じています。これらの実現に向けて地域社会や学校や関係団体とのインターミディアリー(中間支援)機能を果たすことができるのは、ボトムアップの運動を身上とする私たちではないでしょうか。地域社会に本当に必要とされている教育は何なのかを市民目線から検証し、関係団体との連携を図って新たな一歩を踏み出すことができれば、私たちの運動の波及にも繋がるでしょう。子供たちのアクティブ・シティズンシップを育むために、広島青年会議所がこれまで培ってきた経験を元にして、教育現場で何ができるのかを考えていきましょう。
    そして、2011年度に広島青年会議所が中心となって立ち上げた青少年育成事業「広島キッズシティ」は毎年の成果を上げ、ブランディングが着実に進んでいます。本年度は5回目という円熟の時を迎えるにあたり、以下のことを考えていきましょう。まず、本事業は2016年度の全国大会とどのように関わるべきなのでしょうか。そして、その後の事業運営をどのように行っていくべきなのでしょうか。今後の事業展開を考えるにあたっては、単年度事業の運営メンバーとして関わるだけではなく、本事業をリードする団体として、中期的な視野に立った本事業のあり方を策定する必要があります。

<志高きアクティブ・シティズン主導のまちづくりを目指そう>

   私たちはこれまで運動の一環として数多くの事業を展開してきましたが、広島青年会議所の事業において最も重要な指標は何でしょうか。私は、事業における直接的な結果よりも、今後まちづくりに能動的に携わっていこうと考え行動する志高い市民をどれだけ創出できるかに重点を置きたいと考えています。これにより、アクティブ・シティズン主導のまちづくりを推進していきたいと考えています。
   広島が広島たるアイデンティティは、明治時代から戦前までは紛れもなく軍都としての機能にありましたが、一転して戦後から現在においては国際平和文化都市としての性格にあることは疑いようもありません。そのような背景から、広島青年会議所はこれまでも数多くの平和事業を展開してきました。しかしそれらは祈る平和や非核反戦の希求にとどまらず、市民が文化芸術などの手段を通じて自ら創り出す平和運動の推進でした。またその課程で、広島平和記念公園の活用に関して一石を投じたことは間違いありません。来たる全国大会という大きな舞台での更なる伝播を視野に入れ、これまで積み上げてきた私たちならではのアクティブ・シティズン主導の平和運動をさらに推し進めていきましょう。
    次に、広島においてまちの課題に対して真摯に向き合い積極的に活動している若者に、本年度も引き続き注目していきましょう。社会における大きな責任を自覚し、能動的に広島の未来を切り拓く若者の存在は、アクティブ・シティズン主導のまちづくりに不可欠です。だからこそ、そのような若者を発掘して、彼らの情熱あふれる活動はもちろん、その活動の源となる高い志にスポットライトを当てましょう。そして、大きな舞台でそれらを広く市民に伝播することで、新たな若きアクティブ・シティズンが生まれることを願っています。
   そして、そのような運動の推進において肝要なのは、その結果どのようになるかというビジョンを大局的な観点から描くことです。青年会議所の最大の特徴は「単年度制」と「40歳卒業」に集約されます。この二つの特徴により組織が常にフレッシュに保たれて活性化が促される反面、中長期的な視野に立ったまちづくり運動やひとづくり運動には必ずしも適しているとは言えません。だからこそ、中期ビジョンを策定してメンバーの共通認識を形成することが必要なのです。前回策定された「広島JC中期計画2005」から既に10年の歳月が流れました。その間、リーマン・ショックや政権政党交代など外部環境の激動を経て、広島青年会議所は還暦を迎えました。そしてその翌年の総会において全国大会招致へと舵を切ったのです。創立65周年を迎え、全国大会の開催を翌年に控えた今だからこそ、広島のまちと広島青年会議所のあるべき姿を描き、その実現に向けたプロセスを構築しましょう。そして、外部環境の変化にもぶれることなく、まちに希望を与えられるアクティブ・シティズン主導のまちづくりビジョンとアクションプランを掲げましょう。

<おわりに>

   私はこれまでの青年会議所運動を通して、数多くの同志と出会うことができた。その中でも現在の私に多大な影響を及ぼしたヒーローたちは、リーダーシップのあり方こそ多種多様であったが、共通して何事にも誠実に取り組む人物であった。
   戦前の志高き若者が集った江田島の海軍兵学校(現在の海上自衛隊幹部候補生学校)には、一日の終わりに自らの行動を自省自戒するための言葉として「五省」が伝わっている。

一、至誠(しせい)に悖(もと)るなかりしか (誠実さに反することはなかったか)
一、言行(げんこう)に恥(は)ずるなかりしか (言行不一致な点はなかったか)
一、気力(きりょく)に缺(か)くるなかりしか (気力が不十分ではなかったか)
一、努力(どりょく)に憾(うら)みなかりしか (努力不足ではなかったか)
一、不精(ぶしょう)に亘(わた)るなかりしか (惰性となり怠けていなかったか)

   家庭において、職場において、そして青年会議所において、それぞれの立場で役割や職務に対して誠実に取り組んでいるかどうかを今一度、自分自身に問いかけてほしい。青年会議所は市民の意識変革を推進する団体である。そのためには、私たちが自らの立ち居振る舞いを見つめ直し、家庭で、勤務先で、そして市民に対して説得力のある背中を見せ続けるような、「至誠に悖らぬ」ヒーローを目指していこう。
   いつの時代も社会を変革してきたのは人であり、とりわけ私たち青年世代である。私たちJAYCEEが時代を切り拓くアクティブ・シティズンの先駆者であるならば、巷に蔓延する英雄待望論を打ち破り、新たなヒーローを私たちの手で創り出そう。そして、市民の背中を押す運動を推し進め、志高きアクティブ・シティズンシップを確立し、明るい豊かな社会の実現に向けたムーブメントを起こそうじゃないか。